大運動会


 暑い。あぢぃ。むっしむっし〜。
「ねぇアナタ」
「駄目」
 即答されちゃった。むむぅ、人肌のほうが冷たいと思うのにぃ。
「あいつの出番までもう少しだぞ……そんなにぐで〜んとしてていいのか?」
「いいのよ。いっっっっつもこんな感じだし〜」
 娘に怒られるのには慣れた。私は何にも囚われない自然体なのです。
 フリーダムモード。いっきまぁす。
「……くっついてもいいから、ほら、砂地の上に寝そべろうとするな」
「わぁい」
 ぎゅっと旦那様を抱きしめる。うん。やっぱり――
 やっ……っぱり…………
 暑い!
「もう、カイロみたいなくせに近寄るなっ」
「ちょ、おま――抱きつきたがったのはそっちだろ!?」
 ううん。キリリと冷やしたミネラルウォーターはつめたひー。
「並んだぞ?」
「うん」
「応援、構えなくていいのか?」
「いいよ。あの子、応援しなくても頑張ってくれるもん」
 それに、あまり騒ぎすぎるなって釘刺されたし。ぷんぷん。
「ツンツンな娘を持つと、困るわぁ」
 ミネラルウォーターをやけ飲み。ちょうどその時、パァンというピストルの音が響いた。
 障害物走が開始されたようである。ひとり、ふたり、ハチマキをつけた走者が過ぎていって、その後に娘がえっちらほっちら――
「おうりゃぁぁぁぁぁ。がんばりなさぁぁぁぁぁぁぁぁいい!」
「ちょ、おま、注目浴びてるから自重しろっ」
 一度ギッと私を睨んで、娘は顔を逸らす。
 ぐんぐん疾走していって、彼女はひとりふたりと追い抜いた。

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