【タイトル】  ショートショートすと〜り〜ず【 共 】 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  恋愛 【種別】  短編小説 【本文文字数】  1672文字 【あらすじ】  君を選んだ僕に、迷いはないだろう。君の望む道は、僕の望む道で、僕の未来は君のおかげで光り輝き、新たな自分をみつけることができた。でも、それは君がいるからなんだよ。多分口にして言いはしない。でも、常にそう思う。そんな時の、ある日の高校部活中に。 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  I want it simply because there is not it 「君の描く絵はいつも綺麗だね」  唐突に、そう告げられた。  集中を切り捨てるような轟音にも思え、ギョッとして振り返る。  そこにいた女の子は、幼馴染で、恋人の三城。 「そっちのほうが描いてた期間長いだろうが。僕なんてまだまだだよ」 「そんなことないよ、みっくんの絵って繊細っていうか、透き通ってる」  覗き込んできた表情は、うらやましいという輝きに包まれいる。  正直、僕の絵は綺麗だった。  でも、それは近くに綺麗だと思える存在がいるからで……  三城の絵は、平坦だった。  難しく考えているからか、いつものような陽気さがない。  それでも、楽しいと思っているのだから僕は一向に構わないのだけれど。 「自分が薄汚れてるから」  僕はそう言って笑いかけた。  自分の汚さを知り、本当に美しいものを知っているからこそ、描ける絵なのだ。  自分にないものを思い描いているともいえる。  だから、三城には描けない。  三城も僕と同じくらいいっぱいつらいことを経験して、悩んだだろう。  でも、三城は満足していた。  ときめいていた、輝いていた、満足していた――今の日常に。  だから、これ以上求めていなくて、集中しきっていない。  絵がどうなのかじゃなく、絵を描くときが幸せ。すきなのだ。  つまり、天才画家は目指せない。 「みっくんはいっつもそんなこという〜。怒るよ?」  そういいつつ絵の具が付いた筆を握り締めて向けてきた。  僕は軽く笑い、三城に手を振る。  そのとき、僕のズボンへ一滴の絵の具が零れ落ちた。  弾かれるようにしゃがみこむ三城。 「どうしよう! 絵の具って取れにくいよね……制服だから、クリーニングにださないといけないし……」 「大丈夫だって」  僕はそういって傍に置いてある筆拭きを押し当てる。  拡げないように、それでも少しだが色は残った。  三城の言うとおり、クリーニングに出したほうがいいのかもしれない。 「ごめんねぇ……」 「そうだな、三城が悪いな。なら、ひとつお願い聞いてくれるか?」 「え、うん――で、何?」  賛成してから内容を聞く。  三城の性格には思わず笑みを漏らしてしまった。  どうにかそれを押し殺すと、口を開く。 「僕の絵、これからは三城に、一番最初に見て欲しい」  前から考えていたことだった。  確かに僕の絵は綺麗だ。でも、見せたいのは教師や友達なんかじゃない。そんなもののために描いているわけじゃない。  三城はほんのりと頬を赤く染め、ぼそぼそと呟き始める。 「それって……えっと……私じゃないと駄目?」 「うん。三城に――見て欲しいんだ。いつまでも。描き続けることになったら」 「――責任重大だね。しょうがないなぁ」  三城は明るくはにかむと、胸に手を当てた。  成長途中の胸部は既に盛り上がりをはじめている――なんて、見ている場合じゃない。 「みっくんの恋人、三城さんがその大役を請け負いましょう! でも覚悟してね♪ みっくんが上手くなるようびしびし辛口助言しちゃうから。上手くならないとデートは毎回みっくんの奢り♪」 「了解しました。三城お嬢様」 「よし、私のために上手くなってね♪ 三城の王子様なんだから♪」  王子様か――僕はにやにやと笑ってしまう。  その表情を見た三城が口を尖らせた。  楽しかった。決断に間違いはなかった。間違いなんてあってたまるかと思った。  ――すべてを捧げて、すべてを捨てて、本当に愛する人を選ぶ。  それはすぐにも壊れてしまいそうな薄いガラスの決断。でも、とても美しい。  そんなもので、僕たちはつながっていた。  多分だけど、壊れることは無いだろう。  二人が想い続けるから、ガラスは輝きを増し続ける。  ――ありがとう。  僕は心の底からの笑みを浮かべ、そう感謝した。  数年もかからぬ間、一人の若き天才画家が世界に知れ渡ることになるが――その画家には、たった一人のお姫様がいたという。  There are two kinds of geniuses. It is two of the genius who is going to bury emptiness and the genius who know something to be delicate