【タイトル】  ショートショートすと〜り〜ず【  暖  】 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  恋愛 【種別】  短編小説 【本文文字数】  796文字 【あらすじ】  私は君と同棲する紳士的男性だ。君との生活は刺激的で甘甘でとにかく蕩けそうなのだが、だんだんと親父くさくなってくる自分自身が嫌いになってくる。私は今まで自分という個を曖昧にしていた。いまの私だからわかる。君は私を助け出してくれた。君は必ず違うというだろう。そんなことを思い、ふと目蓋を開ければ、みえたのは新婚生活並のラブラブさをもってして生まれた白一色の巨大ベッドだった。そんな目覚めの良いある日の、ちょっとした心情物語。 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  It is necessary to realize it when happiness is happy.  ……今の私は幸せだ。  私に寄り添う君は、幸福と暖かさを私に照らしてくれる。  私が君に与えているものはあるのだろうか。  君はきっと、あると答えるだろう。  だから聞かないでおく。  ――それにしても、静かだ。  君よりはやく起きた。この偶然に感謝したい。  のんびりとした生活、君だけを見ていられる生活。  心が丸くなったと思うのは、錯覚ではないだろう。  君の寝顔はどんな写真よりも、映画よりも、3Dよりも美しい。そう、ベッドの下に隠してあるもろもろよりも見惚れてしまう!  ――などという失言はともかく。  暖かい日差しに照らされてすやすやと眠る君は、私の姫だ。  髪を撫でてやりたくなるが、起こしてしまってはこの悦楽天国が廃墟と化してしまう。  なんとか抑えきり、私の腕を枕にして眠る君を覗き込む。  しっかりと閉じられた目蓋。テンポのない、気持ちよさそうな寝息。  吐息が私の頬に触れると、甘い刺激を伝えてくる。  唇を奪ってしまいたくなるのもこらえきった。私は漢だ。  白いカーテン、白いベッド、白い羽毛布団。  静かに眠る君を起こすこともなく、私はただ無駄と呼べる時間を刻々と過ごした。  それが、私の望む人生の一角。  自分が望んだ時間に乗るという決意。  動かされるのではない、自ら選ぶということを知った。  ――あえて言おう。  私は、君の隣にいる選択をし続けると。  君が私を悪と言わない限り、君が私に憤怒の刃を向けない限り。  ……私は幸せだ。  小鳥の囀(さえず)り。君に出会わなければ、この声を聴くことはなかっただろう。  君に出会わなければ、日の暖かさを知ることもなかっただろう。  君の髪を撫でる。  狂おしいほどの愛おしさを、余すことなく君へと注ぐ。  そして、新たな誓いをたてた。  君を残して、私は死にません――  Because there is you, I will be in this world.