CROSS!〜物語は交差する〜 水瀬愁 踊り舞おう。純真な妖精ように。心躍らそう。未知を垣間見る事其に。 ******************************************** 【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  ♯02[拾われたそれは、今を垣間見た](第102部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  5179文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************ 0. 「音子さん」  廊下を抜け、リビングに出たミレは口を開いた。  声に応える者は、にゃーい? と言いつつ台所から顔を覗かせる。  ……音子陽菜。マイマスターのお隣さん。三角頭巾のおミミが可愛い。マイマスターのお世話をするのが日常の大半。だけど、昨日のように朝早くから登校しなければならない場合に限って、キッパリとマイマスターを捨て行く。  放課後の活動も最近では多くなってきているらしい。さすが生徒会中央委員会といったところだろう。  幼小中高一括の学園『風宮学園』は、その大規模さから生徒会も中央・左翼・右翼に分けられている。中央はどれよりも一番忙しいチームで、これからもマイマスターのとこへ来れる回数が減ってくるだろうと推測できる。  そう考えを巡らせるに数コンマ、ミレは陽菜を視線に捉えた。 「マイマスター篠崎は、まだ眠っています。私にはマイマスター篠崎の状態に干渉できる権利を所有しておりませんので、援助をおねがいします」 「……へ?」 「……私の代わりに、篠崎を起こしてくれますか?」  言葉を噛み砕いたミレは、にっこりと微笑んで頷く陽菜に思う。  ……常人的レベルでの「賢い」という言葉が妥当な人ですね。少し天然さがあるようですけど。  その感想は、第一印象とさほど変わってはいない。 「あ、それじゃ、おみそしるのほう任せていいかな?」 「……かき混ぜていればいいのですか?」  陽菜におたまを譲渡されたミレは、いくつか陽菜に質問を発する。  それひとつひとつに答えた陽菜は、ふぅっと息を吐き出し気合を入れるように拳を作ってからリビングを飛び出した。 「……ん」  おたまを鍋に突っ込み、ゆっくり豪快に混ぜ始めるミレは思う。  ……どんなラブコメですか、これは。  幼馴染の女性に起こされる男主人公。これはラブコメディだ。幼馴染が女性であり、主人公が男であることすらもラブコメディだ。 「……もうすこし優しく起こしてくれないか?」 「反抗許すと先輩は長話し始めるからだ〜め。時間ないんだからねっ」  リビングに来た男女を見て、ミレは思わざるを得ない。  ……どんなラブコメですか、これは。  おたまで啜った味噌汁が美味いことを、ミレは思わざるを得ない。  CROSS! 3nd〜輝かんばかりの交錯を〜  第二話:拾われたそれは、今を垣間見た 1. 「それじゃ、行ってくるね♪」 「はい、いってらっしゃいませ」  ペコリとお辞儀したミレは、陽菜と篠崎を見送り終えてこの家に独りとなった。  さて、どうするかと考えるミレは思考回路を回転させ始める。  ……移動区域制限がないので、外を出歩くことができます。  風宮島というものを情報以外で理解する必要があるかどうかはわからないが、選択の候補として浮上させられる事柄ではありますね。  ミレはそう思って、ひとつの場所に閃いた。  ……風宮学園。  マイマスターの行っている場所でもあることから、幾分か興味を抱いてはいる。ミレは本心を否定はしない。しかし同時に、あそこは一般人立ち入り禁止区域であることを思って行き難いと判断した。 「何か良い手は……」  ソファの前をうろちょろするミレ。  七度ほど往復して、ミレはぽんっと合掌した。  その脳裏に浮かぶのは。 「マイマスターの友人様と出会ったあの塔を拠点とするのはどうでしょう?」  昨日(さくじつ)、山――学校の裏門――越え、谷――教師の徘徊経路――越え辿り着いた、聖堂か教会を思わせる|自治委員(ジャッジメンツ)専用塔。  【Babel】 2.  教室よ、私は帰ってきた! と発言するよりも早く奏がにっこりと微笑んでおはよ〜♪ と言ってきたのでボケをかますタイミングを失った篠崎は恨めしげに奏へジト目を向けつつ朝礼までの時間を適当に過ごすため自席へと再び歩み始めた(長い 「そういえばさ、篠崎君」 「……何だ? 何か用か?」  別に用ってわけじゃないんだけど、と前置きした奏へ、篠崎は先ほどの不満気を拭いきらぬままに振り返った。  そのため、奏を急かす声は少し低くドスがきいている。 「今日は、授業出るのかな? 愛乃ちゃん」  しかし、首を傾げ尋ねる奏は全く意に関していないようで、篠崎ははぁっと溜息を吐かされた。 「……陽菜のクラスだから、俺たちにはわかりようがない」 「まあそうなんだけどさぁ。愛乃ちゃん、いつも最低出席日数ぎりぎりだし……」  余計な心配のしすぎだと思う篠崎は、いいやと訂正した。  ……あのサボリ魔の凄さの前で、総ての者は下手(うけ)に出ざるを得ない。  出ざるを得なくなる、というべきか。空間(ふんいき)を司るのが愛乃(あちら)なため|全生命体(こちら)はそれに圧倒されるまたは賛同させられるほどに思考回路を衰弱させられてしまう。  この奏の精神状況も、それに値する何かなのではないか。篠崎は思い、口を開いた。 「悲しいな」 「……ええと、何が?」 「それが悲しいといっているんだ、奏よ」 「ひどー! よくわかんないけどひどー!」  今日の空もとても青いなぁと、篠崎は窓の外を見上げて思うのであった。 3.  ……この音は朝のホームルーム開始を告げる鐘でしょうか。  障害となる音がない塔内では「キ〜ンコ〜ンカーンコ〜〜ン……」は綺麗に響き渡っている。  それに耳を傾けるように首をかしげたミレは、アイカメラに一瞬だけ光を灯して顔を上げた。 「おっと、声かけるよりはやく気づかれちゃったか〜。さすがミーちゃん♪」  ブルマに白地の半そでという体操服姿の愛乃が、上の階からミレを見下ろしていた。  ミレは瞳(アイカメラ)を大小させ、愛乃を捉え、両手を上げ、その手を丸め、言った。 「こんにちにゃー」 「コンニチニャー♪」  平坦で機械的な声に元気ではきはきとした声が応え、訪れる静寂。  目と目を合わせ、視線と視線を絡める愛乃とミレは―― 「にゃにゃ、にゃにゃにゃっにゃにゃにゃにゃん♪」 「にゃにゃ? ばいにゅーばいにゃんにゃんぶーにゅー」  違う次元の言葉を介して共鳴し合いはじめた。  にゃうにゃうにゃう、ばう、にゅーにゅーばいにゃにゃー…… 「ミーちゃん偉いね〜、ボクもがんばらないとっ」 「はい、授業にしっかり勤しんでください。みなせ様」  ばいばーい、と手を振り視界より消えた愛乃に、ミレは疑問を抱いた。  今自分の立っている場所が入口兼出口の門前だからこそ。  ……ここまで降りてくるのだから、ばいばいではないのでは?  そうして、はたと思い至る。  ……塔と校舎を繋ぐ通路が別にありましたね。  愛乃はそちらへ行ったのだろうと推察して、ミレは思考を完結させた。  無人な塔内を見渡したミレは、両拳を口元へ持って行き。 「ミーちゃん。がんばりますですっ」  あまりにも機械的でない声で、堅い誓いを立てたのであった。       ○  ○  ○ 「やあ! CM担当パーソナリティ『諺兎(ことわざウサギ)』だぜAHAAHAAHA! これからもAパートとBパートの間で出てくるからよろしくなっ!」       ○  ○  ○ 4. 「いち、にい、さん、しぃ……」  身体を捻りながた、皆へと声をあげる陽菜は体操服姿だ。  それに従うようにして動く皆も体操服姿で、グラウンドとのミスマッチさはない。 「片脚のつま先持って、もう片脚で立つやつ〜」  声だけは元気よくな陽菜は、めんどくさいという思いを膨らませて溜息を吐いた。 「……んしょ、んしょ。あ、あれっ?」  女子生徒の最前列でバランスを取れず悪戦苦闘する愛乃に向かっての溜息であることも、あながち間違いではないだろう。  陽菜は「反対の足〜」と指示しようとして、あっと声をあげた。 「陽菜さん。どうかしたんですか?」 「い、いえ。なんでもないです」  訝しげな目を向ける教師に、陽菜はごまかし笑いを浮かべる。  クラスメイト達(ら)に目を戻し、指示を送ってから何度も何度も|そちら(・・・)へ視線を向ける陽菜。  あるはずがないという意思に背いていない視界。釈然としないものを感じつつも、陽菜は無理やり自分を納得させて|そちら(・・・)を見ることをやめた。  |そちら(・・・)にある――ここからは遥か先だが――廊下を横切ったように思えた、見覚えのある少女の姿を脳裏にちらつかせて。 「……んにゃっ!?」  尻餅をついた愛乃が、いててと悲鳴をあげた。 5. 「にゃーーーーー!!」  悲鳴を聞き、校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)を歩いていたミレは弾かれるようにして走り出した。  校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)に垂直に向きを変え、弾丸のように跳ぶ先では…… 「にゃー、にゃっにゃっ」 「しっしっ。我が校の敷地内に入ってくるなっ」  ……罪のない三毛猫――ミレの第一印象――が、いかにも悪者な厳つい顔をした悪漢――またもミレの第一印象――にいじめられているように見えた。  ミレは判断した。 「……対象を、全力排除すべき外敵と断定」  疾走が、さらなる高速へ跳ね上がる。  あっという間に悪漢の背後に陣取ったミレは、アイカメラを点滅させるに高速移動に費やした時間と同じ分をかからせて。 「てりゃー」 「ぬおぉぉぉぉおぉぉぉおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉ!?」  悪漢の首元を掴み、軽々と悪漢の巨体を投げ飛ばした。  平坦で機械的な声と、断末魔地味た熱狂的な声とが不協和音する。  校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)の方向へ宙を舞う悪漢は、校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)まで投げ飛ばされ、校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)を転げ回り、校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)を煙まみれにして、校庭を突き抜ける廊下(両壁はないが、屋根はある)からはみ出るぎりぎりで止まり、静寂した。  ミレはグッと拳を突き上げる。 「にゃんにゃんは勝つ」 「にゃーんにゃーにゃんにゃーにゃんにゃーにゃー♪」  それに賛同する三毛猫の鳴き声が大きく響いた。 6. 「……嫌な予感がする」 「いきなりどうしたの?」  エリィが篠崎の呟きに反応して振り返る。  いや、と言葉を濁した篠崎だったが、エリィの興味津々という瞳に負けて口を開いた。 「……我が家に置いてきた自動人形が、ここに来ている予感がするのだ」 「ええと、反応に困るねぇそういうの」  声優志望が、そのようでは後々困るぞ……ラジオとか。と思う篠崎は、しかし今の話題を繋げることにする。 「なんだか、我が家の自動人形がネコを追い払おうとした教師をぶっ飛ばしてたりネコボスにゃんと対立したけど教師をぶっ飛ばしたときに助けたネコが仲介に入ったおかげで和解してたりネコ集団(グループ)と戯れてたり……してるんじゃないかって気が、してな」 「……篠崎くんの予感は、よく当たるからなぁ」  顔を見合わせたエリィと篠崎は、お互いに言葉を詰まらせて見つめあい続けた。  キ〜ンコ〜ンカーンコ〜〜ン……  チャイムが鳴り響く。 7.  夕暮に染まるBabel】の門。  その前で、大量のネコ集団と手を振り合って別れたミレがいた。  目じりに浮かぶ涙を拭い、グッと唇を結んだミレは、言う。 「……今日は、一生忘れない良い一日でした」  ……一体何があったのだろうか。  私たちに、それを知る術は存在しない。  総ては次週――になっても明かされないのは予めご了承くださいっちょ。 「……にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜」  無機質に声を連続させ、ミレは小走りで帰路につき始めたのであった。 8. 「ただいま」 「おかえりなさいませ。マイマスターと陽菜さん」 「ただいま、ミレちゃん♪」  リビングで声を交わす三人。  冷淡な声と、男らしく野太い声と、可愛らしく澄んだ声。それぞれが、音の切られたテレビのあるこの部屋で響く。  その内の二つが少し疲れ気味なのは、学校帰り直前だからか。 「それじゃ、パパッとご飯作っちゃうね」  ソファに沈み込んだ篠崎へ、陽菜は声を発しながら台所に消えた。  いつもの日常。ミレにとってもインプットされていることなので、何の変哲もないととれる。篠崎にとっては、気にも留めることのない日常でしかない。  食事ができた合図の一声で動き出すつもりだった――それまで動く気のなかった――篠崎は、しかし。 「ちょっ!?」  凄い勢いで壁にへたり込んだ陽菜に、慌てて駆け寄らざるを得なかった。  陽菜と一言二言交わし、台所へ去った彼。  その一部始終を見たミレは、思う。 「……にゃ〜」  思い、篠崎の絶叫を聞きながら淡い微笑を浮かべた。       ○  ○  ○ 「AHAAHAAHA! 今日のCROSS!はここまでだ! CM担当パーソナリティ『諺兎(ことわざウサギ)』が予告をしちゃうぞ〜☆  今回、篠崎がミレを皆に紹介するシーンやらが飛ばされてたね〜。次回も今回と同じくらいに話が飛ぶ気がするから、ちゃんと妄想夢想して補うんだぞ〜AHAAHAAHAAHA!  次回のお話は、な・な・なんと気になるあの子がついに編入してくる、かも! 気になるあの子って誰のことだろうね? まさに気になって仕方がない!  それじゃ、本編をこれからもよろしくNA! AHAAHAAHAAHAAHAAHA……」       ○  ○  ○