【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  ♯04[十代目アイラブユー(2)](第114部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  3214文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************ 「店長は今、ちょっと外に出てるよ」  俺はそう言って、カウンターの奥の小部屋(通称"奥")へと二人を進めた。  神妙な顔つきでそわそわする正利が、軽く頭を下げて俺の脇を抜けていく。  正利とぎゅうっと手を繋ぐ少女も、その後を追う。 「とりあえず、ここに隠れてろ。変なのが来たら、俺と美弥子さんが適当に追い払うから」 「ほんと、ありがとうございます……やつら、胡散臭いですから、無理はしないでくださいね」  安心しろ、お前のような容姿のやつらが相手だったら、恐怖を抱かずに済むだろうさ。もう抗体ができちまってるからな。  という言葉は飲み込み、カウンターへと戻る。ドアを閉め、施錠しようにも鍵が無いという焦燥感を抱いた。  まあ、それほど切羽詰った状況にやすやすとなりはしないだろうがな。 「どんなやつが来ると、思う?」  幾分か緊張しているらしい美弥子さんへ、俺は励ますように軽く笑ってみせる。 「来ても、ストーカーかそこらじゃないんですかね? 最も、ここに逃げ込んだ時点で、そいつももう諦めてるかもしれませんけど」  ほんとうにそうだったら、そう長く匿わなくてもいいってことになる。店長が帰ってきたときにでも、外の様子を聞こうか。善し悪しを判断したら、恋人か彼女連れかとはやしたてて正利を弄ってしまおう。そういえばまだあの子に自己紹介もしていないな。美弥子さんと仲が良くなるか、不安要素が絶えな―― 「……いらっしゃいませ」  美弥子さんが呟いて、ハッと我に返った。慌てて、俺も自動ドアの方へと向く。 「あ、い、いらっしゃいま――」  あっと息を呑んだ。  なぜって、そりゃ、気づいちまったんだから仕方ないだろ。  黒服の巨漢が、列を成してぞろぞろと店内に入ってきた。  ――こいつらが、正利達を追う役だ。  想像していたのとは違うけど、でも間違いない。  圧倒的な威圧感が、そこにあった。まるで今すぐここで死んでしまえと囁かれているかのように、この空間に居てはいけない気がした。  巨漢の一人が、列から三歩ほど前に出る。  眼光のギラつく双眸を、俺は夢中になって睨み返した。  CROSS! 4th〜繋いだ手と手、小さな小さな恋愛模様。べつに冷めなくていい恋の病〜  ヤヴァイやつらだ、関わらない方が良い。そう感づいて、今さらな察知だと内心ほくそ笑んだ。  自分の頭の悪さが嫌になる。ここまでめんどくさいこととは予想もしなかったが、それでも正利とあの少女を匿えばめんどくさいことになると元々わかっていたはずだ。ストーカー野郎の来襲(俺の妄想)しかり。現在の状況しかり。なのに今さら、括った腹などひとつもないと、ぶるってやがる。俺はとんだ馬鹿だ。くそう、胸糞悪(わり)ぃ。  ともかく、まずは……正利達を匿っているとばれていないはずだから、さっさと帰っていただくことに専念しよう。その後にでも、正利相手に文句をたらたら吐けばいい。自己嫌悪に浸ってもいい。  ともかくまずは、現状をどうにかしなければならないんだ。 「……あんたたち。この近くで軍備演習でもしてんのか? そりゃ、海沿いにあるコンビニっていったらここくらいしかないだろうけど、でもあんたたちに売っちまったらこの店はからんからんになっちまう。悪いが、時間かかるだろうけど輸送とかで調達してくれよ」  これはゲームだ。心理を読みあい、鎌を掛け合い、裏を狙いあう。匿う役と捕まえる役の、刃と刃を交えあうような談話。 「食料が足りていないわけではない。それに、我々は軍事に関わる者でもない。あなた方に暴力を加える意思はない、すぐに退散させていただくよ、目的を果たしたらね」  口端を吊り上げるのは、黒服達の代表になってしゃべる巨漢。 「ここに、メアルお嬢様は来ていらっしゃるかな?」  名前に聞き覚えは無い。しかし、フッと脳裏に浮かぶ顔はあった。  その存在を背の後ろに隠すように、俺は考え込む仕草をして大げさに首を横へ振る。 「女の子なんて、来てませんよ。もしかして貴方達、その子のボディガードかなんかで、逃げられちゃったんですか? そんなに大勢なのに?」  巨漢どもが、一斉に表情を取り繕う。だが俺は見た。一瞬だけ眉を顰めて不満をもったことを。  嫌味も適量を図らねばならない。ここで乱闘となってはいけないし、怒ってさっさと帰っていってもらう具合じゃないとだめだ。もうひとつくらい言うべきか否か。 「想像力が豊かなようだな。まあ、今はそのほうが都合が良い。匿っているのなら、早く差し出したほうが君達の身のためだぞ。それに、誤解でもあるしな」  何が誤解だ――言おうとして、飲み込む。いけない。言っては、相手の思うツボだ。平常心を保って、対処しなければならない。 「誤解ってなんだよ!」  声がした。隣、俺とともに匿う役としてこの場に出ている、|キレやすい女の子(・・・・・・・・)の声。  振り返れば、|真野美弥子(まやみやこ)が激怒していた。 「どうせアンタらは、あの子をどうこうしようと思ってんだろうが! 抜けぬけと偽善者ぶるんじゃねぇよ! 失せろ!!」  まずい。非常にまずい。  いや、もう地雷は踏まれてしまった。わかっている。しかし、これ以上しゃべらせるというのも恥さらしにしかならない。俺は慌てて美弥子さんへと歩み寄り、片手で彼女の口を覆って彼女を黙らせる。 「むぐー! んー!!」  噛まないでくださいよ。手のひらの皮膚が千切られそうで怖いや。  そうして、俺は再び巨漢へと向いた。  事態は一転。それを示すように、巨漢の代表者は勝利の笑みを誇っている。 「奥に、行かせてもらおう」  駄目だ、と言うことは簡単だ。だが、どうせ俺が壁でいられる猶予なんてコンマの世界。有言実行、不可能。  俺は、黙っているしかない。  それを肯定(こうふく)と見て取って、巨漢の代表者が後ろの奴らへ合図を送った。  ぞろぞろと、俺と美弥子さんの脇を抜けてカウンターの奥に進んで行ってしまう。  負けだ。痛くそう感じた俺が、美弥子さんに込める力を強くしようと矢先―― 「おいおい。お客様はお通りできないぜ」  ハッと、俺は振り返る。  なぜいるのか。そんなことはわからないけれど、だけどじんじんと来る衝動が凄まじくて、そんなことどうでもよく思えた。  カッコいい登場じゃないかよ……くそう、むっちゃ、カッコいいぜ。大事なことなので二度カッコいいって言ってやるよ―― 「なあ、お嬢?」  ――――店長。  と、ななみさんまでいらっしゃる。  |磯野宮ななみ(いそのみやななみ)さんは学校の制服らしきものを着こなしていて、いつもとはまた違う魅力のある清楚美人だ。  妙なツーショットである。店長とななみさん。それに、出て来たのもどう考えてもカウンターの奥からなわけで、そうなると大きな大きな矛盾が生じてしまうのだ。  まあ、それはいいとしておこう。先ほど、スルーすると言ったばかりだしな。それに、この登場は都合が良い。 「奥に行く手間が省けてよかったですね」 「む?」  俺が言うと、巨漢の代表者は訝しげに唸る。  俺はさらに、付け足した。 「あの子のことなんでしょう? ななみさん、前に外国での名前があると言っていましたから、あなた方は彼女が|塾からそのまま(・・・・・・・)|帰ってこないのに(・・・・・・・・)|怒って(・・・)こんなところまで探しに来たんでしょう?」  豆鉄砲を喰らったかのようなそいつの顔は、一生忘れられそうにないくらい決定的なものである。プププ、さっきのお返しだよ、ニカーっと笑っちゃる。 「その様子だと、ななみんのことじゃなさそうだな。じゃあ、ここに居座ってる暇は無いんじゃねぇの?」 「くっ……」 「ほらぁ。ぬか喜びだったんだから、その分せっせと探し回って来いよぉ。その図体は鎧ですかぁ? んんん?」  さすが店長。俺と違って、弄りに抜かりが無い。蛇のように他者を射竦められそうな巨漢の眼光も、店長の前じゃ形無しも同然だ。  思わぬ助太刀があって、俺たちは見事その巨漢達を退散させることに成功したのだった。