【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  ♯14[愛してるぜベイベー(5)](第124部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  1889文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  白いカーテンがふわっと舞い上がった。  四脚のベッド。真っ白のシーツ。その向こうに、カーテンの隙間から漏れる光が、一人の女性を照らしていた。  まず思ったのは、あっと息を呑むほどの美貌。次に、その女性から、美弥子さんを彷彿させられた。あっちよりは、幾分かおっとりしていそうに見えた。 「あら、まぁ。お若いお客さんね」 「いえいえ、そちらこそ若くて美人で麗しい」  お世辞が上手ね。と優しく微笑まれる。なんだか、落ち着いてくる。この女性のパワーを感じた。  ひとしきり言葉を無くして、それから俺は初めに抱いた疑問を口に出す。俺の疑問を訊いたその人は、数秒目を閉じてから、また優しく微笑んだ。 「はい。私は、|真野美弥子(まやみやこ)の母です」  やっぱりそうか。俺は、美弥子さんの母に笑顔を浮かべ返した。  CROSS! 4th〜繋いだ手と手、小さな小さな恋愛模様〜 「娘は、どうですか? 迷惑をかけてしまっているでしょうか」 「迷惑ってか、まあ、振り回されてはいますね」  少ししゃべりませんかと尋ねられる。ええと頷く。その後、美弥子さんの母に、ベッドの端に腰掛けるよう提案された。確かに座った方がしゃべりやすいし、そう失礼にもならないはずだと思って、俺は従った。  娯楽の何も無い部屋。白、白。白しかない。白以外に何も見当たらなくて、こんな場所に居たのでは退屈だろうなと思わざるを得ない。 「まぁ。すごく仲が良ろしいのですね。娘は、気の合う人に対してだと余計に突っ張ってしまうんですよ」 「いわゆるツンデレってやつですか」  俺は渇いた笑みを浮かべた。母方は、わからないといったふうに首をかしげるが、その疑問は胸に仕舞ったようだ。柔らかな笑顔を返してくれる。 「いえ、アハハ――でも美弥子さんとは、仲が良いって言うよりも腐れ縁って感じです。学校で悪友でもしてそうな」 「それも、ひとつの交友関係ですわ。これからもうちの娘と、末永くよろしくおねがいしますね」  末永くと言われ、確かに今のような毎日がいつまでも続くわけじゃないと気づく。  全て移り変わっていくものなのだから、不安定じゃないほうが不思議なくらいなんだけど…… 「まぁ、はい」  とりあえず頑張ります、という意味も籠めて、俺は頬を掻いた。  那由多程の時間が流れた錯覚。他愛無いことをお互いにこにこしながら話す。その最中、母方が唐突にあっとが声をあげて、客人が来ることを話してくれた。  もうすこし話していたい。そう思ったのが顔に出てしまっていたのか、虚々していると男の子のターンが終わるわよと注意されてしまう。  思わぬネタに言葉もない。序に、逆らう気も毛頭無い。兎も角、そろそろ出て行かなくてはいけないとわかったので、速やかに動き出すこととする。  けれど最後に。と、俺は姿勢を正して母方に向き直る。 「今日はありがとうございました」 「いいえ」  最後まで母方は笑顔をつくってくれる。美弥子さんの生みの親とは到底思えないなぁと、俺も笑って。  ――至る所から伸びるチューブ。  ――至る所へ繋がれるチューブ。 「美弥子に、伝えていただけますでしょうか」  歩き出した俺の背中に、そう言葉がぶつけられる。  不思議な雑音が、混ざっていた。  ――集ってくる人々。  ――去っていく人々。 「―― ― ―」  どうしてそんな事を、と尋ねるために、立ち止まって俺は振り返る。  ――途絶えない音。  ――途絶えていく。  ――――――音(しんおん)。  なんだこれは。  白衣を着た人が集まってきて、あの人のベッドに群がっている。俺の脇を、看護士がせわしなく過ぎていった。  なん、なんだ。一体何だよ。  行き交う人たちが、騒音をたてる。耳障りで、本来なら、|そんな音が聞こえる(・・・・・・・・・)|はずはなかった(・・・・・・・)。  でも聴こえた。どこまでも、どこまでも響いてくる死の宣告。耳障りな騒音を押し退けて、全てを無くしていってしまうその音波が、どこまでも渡ってくる。  なんだの疑問は、本能による理解でなんとなくは解消された。そして、死の宣告と表現したとおりなのではないかという、更なる疑問を渦巻かせてくれる。 「お……母さ……ん…………?」  その疑問もすぐに打ち破られた。全く別の危機によって。  振り向く。つまり、先ほどまでの進行方向に向き直るわけだ。  出て行こうとしていた方向なので、ドアがある。そのドアは開け放されていた。その向こうへと、俺の脇を通った看護士がばたばたと去っていくのが見えて、 「や……イ……いやぁ――――」  その看護士に脇を過ぎ去られる中で、呆然としている美弥子さんをみつけた。  何かが脆く崩れ去る音を、美弥子さんが涙を溢れさせるのに気づきながら、感じた。