CROSS!〜物語は交差する〜 水瀬愁 CROSS! An after story〜こうして物語は交差した〜(CAAS)にて風宮島シリーズ復活です♪ 結構短めなのは前編だからですよっと。 ******************************************** 【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  ≪僕のピアノと、女の子−出会−≫(第64部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  1389文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  小夜歌さんが、僕のピアノを聞くよりも――ずっと前のお話。 『CROSS! An after story〜こうして物語は交差した〜』  ≪僕のピアノと、女の子−出会−≫  偶然なんてものはないと、あるマンガで言っていた気がする。  この世にあることは必然だけ――すべてはすでに定められているっていう、夢のない考え方。  今は夏真盛り。少しぐらい、何か大きな偶然があってくれてもいいものだ。青春でロマンな季節だもの、夏だけど春の雰囲気漂う季節なんだもの。  例えば。例えばだけど。 「天城さんと一回くらいはお話したい、よなぁ……」  廊下を歩きながら呟いているとただの変人っぽいので、口の中でごもごも言うだけに留めておく。  放課後だというのに当てもなく彷徨っていると、熱心に走っている運動部の方々の視線が痛いや。  さっさと帰ってもやることはない。せいぜい睡眠時間が増えて背がすこぉし伸びやすくなるかもしれない程度。  ……商店街でも寄って、ぶらぶらしてたほうがまだマシなのかな。 「あー……我々青組一同は……えー……一致団結しスポーツマンシップにのっ……って、違う違う」  ん? なんかぼそぼそ声が……  聞こえてきたのはちょうど通過しようとしていた音楽室から――だと、思う。  開いていたドアに手をかけ、中を覗き込んだ。 「あー……うー……おぼえられん」  一人の女の子がうなりながら一枚の紙を食い入るように睨んでいる。  その女の子が着ている制服から、同級生だとわかった。 「……何してるの?」  だからおもむろに話しかける。  女の子はびくっと身体を震わせて、弾かれるようにして僕へと振り向いた。 「あ!? え、えと……だ、誰?」  ショートカットを揺らして動揺しながら首を傾げてくる。  そして、やっと自らの失態に気づいた。 「か、片瀬愁……なん、だけ、ど」  気づいてしまうと、恥ずかしいのと小さな罪悪感とで穴があったら入りたいくらいな気持ちになってしまう。  室内へとのそのそ身を入れ、合掌する。 「ごめん。何かの練習中……だったよね」 「ああ、いいや……気にすん――き、気にしなくてもいいよ、アハ」  頬を掻きながらだるそうに答えようとしてハッと背筋を伸ばし、今にも頬がピクピクしそうな笑顔を浮かべて言い直した。  ……ええと、とりあえずどう対応したらいいのかな。 「わ、私は美月梓。美しい月にある木の横で十が立ってるって書くの」  わかりやすいけど、わかりにくい…… 「僕は片方の片に瀬戸内海の瀬に、秋の心、かな……」 「あはは、秋の心かぁ……今は夏だねぇ」 「そうだね……」  ……。  ……。  ……。  ……会話が止まってしまった。  初見の僕にもわかる、白々しい態度。  美月さんは――僕のことが嫌いなのかな。 「そういえば、さっき何言ってたの?」 「あー……ええっと」  人差し指と人差し指をツンツンと合わせてもじもじと言葉を濁す美月さん。  食い入るように睨んでいたあの紙はポケットにでもしまったようだ。  何を読んでたのだろう?  何かの……そう、演説で読むみたいな台詞、だった気がするんだけど。  ドモるようなこと、なのかな? 「そ、それはもういいの!」 「いいの? 苦戦してたように見え――」 「そうだ! 私が常連してるお店で新製品のアイスが入ったんだ! いっしょに食べに行こう?」  美月さんは決死な感じに溢れていた。  なんとなくその様子を見ていると…… 「…………うん、そだね。つれてってくれる?」  ……自然と、心が楽しく跳ねていたんだ。