【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  朝起きたときの話14(第87部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  1444文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  朝起きたときの話  天使  悪魔  お願い 「天使か悪魔がその名を呼べば!」 「誰もぎゃ――誰もが震える魅惑の響き!」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……噛んだよな、美姫」 「ここ最近、こういうドジかましてなかったから、つい」  女王ジャンルに目覚めた美姫は、デレでドジなお姉ちゃんにもどりたいようだ。  ふぅっと息を吐いて、ソファに腰掛ける。 「まあ、そっちのほうが美姫姉らしいといえば美姫姉らしいな」 「でしょでしょ〜♪」  グッと拳をつくって、声高らかに美姫は言った。 「あえていおう! デレデレだと!!」 「あえていおう――そんなネタをお前に教えたおぼえはないぞ!?」 「作者に問い合わせねばといわざるを得ない!」 「誰から教わったのかと問い詰めざるを得ないぞ!?」  美姫は叫んで満足したのか、ふんふんと鼻歌を奏でながら俺の隣に腰掛けた。  軽やかに俺のツッコミを放置したまま、だ。  ……怒る気にもなれん。無駄に体力使うだけっぽいからな。  テレビをじぃっと眺める美姫をちらりと視界に入れる。  言動や行動は子供っぽいのだけど、こうやって黙りこくってる姿はとても大人っぽい。  ――なんて思ってると、いきなり美姫が俺へと振り向いてきた。  ぎょっとしそうになって、ぎりぎり押しとどめる。美姫は俺との距離を詰めて、きらきらとした瞳を瞬(しば)かせて言った。 「もうそろそろクリスマスだよ♪」 「……だから?」 「クリスマスっていったら、サンタさんだよね♪」 「いや、そうとは限らないぞ。ケン&タッキーフライングチキンとか、でかい丸のケーキとかいろいろ……」 「サンタさんにどんなお願いするつもりなの?」  無視かよ。 「そうだな……美姫がこれ以上発育しないことでも願っとこうかな? 特に胸とか胸とか胸とか」 「ちょっ、ちょっとそれは――」 「俺の復讐はしつこいぜ!」 「はぅー、ごめんなさいー」  泣きついてきたので、ちょっと勝った気分を味あわせてもらう。  幸せなひと時だ(←悪い人間 「……美姫は、サンタに何を願うんだ?」 「んー」  俺の胸板に頬をつけたまま、美姫はぼんやりと呟き始める。 「ほしいものはないかなー。新しい服を買う必要はないし、食材も足りてるし。 ほしいもの、本当にほしいもの、本当にほしい生活、本当にほしかったもの、どれかひとつじゃなく、全部手に入れちゃってるから。 これ以上欲張るつもりもないし」 「そか」  美姫の髪に五指を這わせる。  うっとりと目を細め、柔らかく微笑む美姫は――可愛かった。  とても、暖かい。感じる。痛いくらいに。涙が溢れそうなほどに。感じる。幸せだってことを。 「俺は……」  美姫は十分だといったけれど、俺はもう少しだけ欲張ってみたい。美姫は、今手にあるものがなくなることを心配をしてるんだろうけど――心配してるんだろうから。 「今の幸せがなくならないことでも、お願いしようかな」  心配で胸がいっぱいになって、今の幸せを感じれなくなるのが嫌だから。  俺は、そう願っておく。  美姫には、安心して微笑んでいてほしいから。 「……そうだね。私も、そう願っとこうかな」  胸板から来る、甘い刺激。美姫が頬擦りしているからだ。  とても甘い。でも、甘すぎるなんてことはない。  ちょうどいい。足りなくなくて、十分すぎるくらいだけど、でも甘すぎるなんてことはない。 「叶ってほしいな、俺たちの願い」  不安げに呟いてしまう。  手の中で強く在るから、余計、心配になってしまう。 「……叶うよ、きっと」  俺を励ますように、呟かれたその声は。  とても暖かくて。とても確信に満ちていて  なぜか肯(うなず)けてしまった。