【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  朝起きたときの話15(第88部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  1113文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  朝起きたときの話  確信犯  南  不慮の事故  商店街の南のほうにて。 「まだ買うのかよ……」 「まだまだ買うお〜♪」  両腕に抱えている六箱がかさばって歩きにくい。  軽々と、今にもステップして歩き出しそうな美姫――さらに俺の歩みを遅くせんとするつもりのようだ。  買い物についてきてくれというから何かと思えば……失敗した。判断ミス。  さっさと終わってほしいと思い、溜息を吐いた。 「クリスマスをパ〜ッと盛り上げるものなんだから、そう嫌そうにしないの♪」  めっと人差し指を突きたてた美姫に、笑みを浮かべながら追いつく。 「……でも、気がはやいよな。まだ冬休みにも入ってないっつうのに」 「冬休みは冬休みで、たっくさん思い出つくりするんだから。今のうちに用意は済ませといたほうがいいでしょ♪」  ……さいですか。  下り坂をとっとと駆け下りていく美姫。俺はその後ろをゆっくりと追っていく。  はやくはやくと急かすように手を振ってくる美姫。  ……このままこけてって、不慮の事故が起きたらどうするつもりだ。  美姫のことだから、ほんのりと頬を赤く染めて――ああ、これ以上は考えられないッ! 「おっと♪」 「――と、わぁ!?」  俺の胸へと飛び込んできた美姫。  反射的に抱きとめ、しかし両腕にあるもののせいで余計平衡感覚が崩れ、思わず足が縺れてしまいそうになる。  グッと堪え――美姫をにらみつけた。 「……確信犯だろ」 「弟君が気難しい顔してたからです♪」  自分の行為を正当化した美姫は、満面の笑みを浮かべて俺の片腕に縋りついてくる。  その顔がとっても幸せそうだから――怒気も失せざるを得ない。 「ほら、さっさと行くぞ……まだまだ買うんだろ?」 「うん♪」  俺は溜息を吐くとともに笑顔を浮かべ、言った。  その言葉に、返って来る声がある。  当たり前。  当たり前なことなんだけど。  とても――嬉しかった。  空を見上げる。  まだ雪は降っていない。  歩む道を見る。  吐き出した息が、白い。  ――もうそろそろ今年も終わり、か。  隣を見据える。  幸せそうな美姫がいる。  ――今年に悔みは、ない。  俺は、そう断言することができた。  美姫と触れ合う腕から感じる、暖かさ。失いたくないって思えるほどに、暖かい。  不慮の事故なんて軽々しくさっきは言ったけれど、今はその言葉がとても怖く感じれて仕方がない。  思いがけないことで失うなんて嫌だと、強く願う。  だから――言う。  口を開く。 「美姫……」 「――弟君が言いたいこと、わかってるよ」  同じことを考えていたのか、美姫はすぐさまそう言い返した。  構わず、続ける。 「……離さない」  迷うことなく、しっかりと――美姫はまた、言い返してくれる。 「……離れないよ、絶対に」  当たり前のようにそう言い切ってくれる美姫が、たまらなく愛しかった。