【タイトル】  CROSS!〜物語は交差する〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  朝起きたときの話18(第91部分) 【ジャンル】  恋愛 【種別】  連載完結済[全127部分] 【本文文字数】  950文字 【あらすじ】  舞台は現代風の孤島『風宮島』。主人公は季節を巡って愉快なヒロイン達との物語を築いていきます。一番の見所であるヒロインは、可愛さ溢れて10人以上!諸所に導入されているバトルロワイヤルも必見です。ほのぼので、ちょっぴりえっちなひと時を、味わってくださいね♪紡がれる、自分の心――届くことを、伝わることを願って――CROSS紡がれた、自分の心――届いた、伝わった、心――想い人との愛を育む力となることを願って――CROSS 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  朝起きたときの話  体温  アイタイ。  パンダ 「相対死にってロマンがあると思わない?」 「自分が死ぬときはいっしょに死ねと、お前は俺を脅迫しているのか?」  ちっちっちっ、と人差し指を揺らす美姫。 「逆に考えるんだ。弟君が『私とならいっしょに死ねる』と考えるべきなんだ」 「結局俺に何かを押し付けるんだな。お前さんは」  パンダのぬいぐるみを投げつける。  片脚を軸にしてもう片脚を薙いだ美姫は、パンダのぬいぐるみを俺に打ち返してきた。  ひどいぞ、もっと大事に扱えよ(←お前もな 「でも、弟君は耐えられるの?」 「……何が?」 「私が死んだ後の世界を生きるなんてこと」  思案する。思案してみせる。思案できるようなことじゃないから、思案するフリをしてみせる。  少しばかり瞳を揺らして、俺の返答を待っている美姫――ここにはない悲しいものを見ているようだった。 「……確かに、無理だな」  思わず浮かんでしまった笑み。痛々しい、自分で気づく。  美姫に言われた仮定を、思い描いてみた。  死ぬ――体温がなくなる。冷たくなる。笑みを浮かべない美姫。永遠に眠り続ける。しゃべりもしない。身体を動かしもしない。俺を見もしない。  身体が震えそうになった。怖かった。たまらなく怖かった――でも、そのときにいる俺は、今以上に美姫を愛しく思っている。そんなことに思い至って、もっと恐ろしくなった。 「残されるのは……きっとつらいよ」  悲しげな呟き。 「……そうだな」  俺は、そう返すことしかできなかった。  それ以上に言えること――閃いて、そっと美姫を抱き寄せる。 「そんな先のこと、無駄に考えなくていいだろうが」  パンダのぬいぐるみを掴みあげる。  まだまだ新品同様。しかし、いつかはぼろぼろになる。そうなったら買い換えるだろう。その繰り返しで何度も何度も買い換える。何回かなんてわからない。なぜわからないか。途方もなく先のことだからだ。  死は、それ以上に遠い。  考える必要はない。足元ばかり見るなとはよく言われるけど、でも、先のことを気にしすぎているのも良い事ではない。 「……そうだよ、ね」 「ああ、そうだ」  キョトンとして、しかしクスリと微笑み始めた美姫。  手を伸ばす。美姫の頬に触れた。指から伝わる暖かさ。美姫が傍に在ることを教えてくれる。  嬉しくて、涙が出そうだった。  でも、涙は出そうじゃなかった。