【タイトル】  S4【病み上がり】 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  恋愛 【種別】  短編小説 【本文文字数】  959文字 【あらすじ】  風邪なんです。風邪のせいなんです――恋の病は侵攻を加速させるわけなんです。 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************       ○  ○  ○  ハッと飛び起きる。  絶え絶えの息。零れ落ちる汗の感覚が嫌で、豪快に袖口で頬を擦(す)る。 「どうした?」 「……ううん、なんでもないよ」  リンゴの一切れを口に入れかけたままのカレに、私は微笑んだ。  我ながら、今にも消えそうな淡い微笑だったと思う――だけどカレは、ふぅんと唸っただけだった。  なんとなく、見渡す。  可愛い小物が散乱していて、淡いピンク調で統一されたこの部屋は、私が毎日を過ごす上で最も起床時に多く見る景色だった。  そうしてる内に息が整い、いろいろなものも整った。 「ふぅ」  上半身をベッドへ落下させ、枕を両腕に挟んでぎゅぅっと抱きしめる。  カレへ背を向けて――これにはちょっとした理由があるのだ。  その理由というのがなんと、口が裂けても言えないようなおかしなこと。登場人物がカレと私で会ったと言っておく。  風邪のせいじゃない赤面を、カレに知られては困るわけだ。 「……はふぅ」  それにしても、変な夢だった。  思い出すだけでおかしくなってしまいそう。  でも……現実になってくれたら、それはそれで。  グッと枕へ顔を押し付け、私は悶えに悶えた。  ……自分のバカっ。あの夢を現実にするってことは、自分からあんなことを言わなくちゃなんないんだぞっ。  あんなことと思って、私はさらに沸騰してしまう。 「おい、ほんとどうしたんだ?」  捨て置けないほどに異様だったのだろう、汗を一筋たらりと流してカレは私の背中を擦(さす)ってきた。  ……あっ、そ、その手つきはだめっ、だめぇ。  むずがゆい感覚が、もどかしい。  進みたかった。扉のその向こう。愛を伝え合い、分かち合う恍惚な世界へ。階段をひとつ昇りたかった。カレとともにあるという実感に痺れたかった。  いや、でも、しかし……あぅぅ。  入り乱れる本能と理性。乱れに乱れる本音と建前――それに決着をつけ、私はベッドから上半身を起き上がらせた。 「……あの、さ」  そして、べっとりと汗の染みるパジャマの胸元辺りを指差し、言う。 「寝汗、かいちゃったんだ……彼氏なんだし、拭いてくれるよね?」       ○  ○  ○  ハッと飛び起きる。  絶え絶えの息。零れ落ちる汗の感覚が嫌で、豪快に袖口で頬を擦(す)る。 「どうした?」 「……ううん、なんでもないよ」  リンゴの一切れを口に入れかけたままのカレに、私は微笑んだ。  我ながら、今にも消えそうな淡い微笑だったと思う――