ショートショートすと〜り〜ず【  欲  】 水瀬愁 ちなみに作者は初恋未体験です。 ******************************************** 【タイトル】  ショートショートすと〜り〜ず【  欲  】 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  恋愛 【種別】  短編小説 【本文文字数】  1403文字 【あらすじ】  独占欲、幸福追求欲、いろんな欲が恋をつくります。これは、そんなお話―― 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  僕のものでいてくれ―― 「なんで学校に行かなくちゃならないんだろうな」  彼は前にそんなことを聞いてきた。  だから私は問い返す。学校に行きたくないのか、と。  彼は首を横に振る。  なぜ、と尋ねた。  彼は悪びれた風もなく、こう言った。 「お前がほかの男と、上辺だけでも愛想よく話してるのが嫌なんだ」――と。  依存されてると、自覚している。 「なんで部活に出なくちゃならないんだろうな」  彼は前にそんなことを聞いてきた。  だから私は問い返す。部活動に行きたくないのか、と。  彼は首を横に振る。  なぜ、と尋ねた。  彼は悪びれた風もなく、こう言った。 「お前以外の女と話したり、指導するのに近づいたりするのが」――と。  依存されてると、自覚している。 「なんで外に出なくちゃならないんだろうな」  彼は前にそんなことを聞いてきた。  だから私は問い返す。外に行きたくないのか、と。  彼は首を横に振る。  なぜ、と尋ねた。  彼は悪びれた風もなく、こう言った。 「お前がいきなり事故で消えたりするのが恐いんだ」――と。  依存されてると、自覚している。  私は彼に、私がいるということを自覚させ、言った。 「私もあなたが消えるのがとっても恐い」――と。  依存していると、自覚している。 「なんで私以外の人に優しくするの?」  私は前にそんなことを尋ねた。  だから彼はこう返す。お前が一番だ、と。  なぜ、と尋ねた。  彼は悪びれた風もなく、こう言った。 「お前以外と親しくするのに意味っていう無理強いはあるけど、お前に優しくするのは俺自身の、本心からの望みだから」――と。  依存していると、自覚している。 「恋してるお前も、嵐で震える子猫みたいなのかな」  彼は前にそんなことを聞いてきた。  だから私はこう返す。それは違う、と。  彼はなぜ、と尋ねた。  私は悪びれた風もなく、こう言った。 「あなただから、弱くなれるの」――と。  依存していると、自覚している。  だから今日も歩く。  二人っきりで、同じ歩調で。  同じ道筋を、手を握り合いながら―― 「なんでお前は俺の傍にいてくれるんだろうな」  彼は前にそんなことを聞いてきた。  桜の枯れた並木道。色あせ、ではないけれど、質素になってムードがない。  私の歩調に合わせてくれている彼は、私の少し前を行く。  私は少し無理をして、彼の顔を覗き込んだ。  彼は首を横に振る。  おかしい、私はまだ何も言ってないはずだ。  その疑問が顔にでていたのか、彼は悪びれた風もなく、こう言った。 「お前は俺のものだから、当然だよな」  依存されてると、自覚している。  でも、嫌な依存なんかじゃない。  そっと私の手に自らの手を添えて、促してくる彼。  俺のもの〜なんて強引なくせに、最後の最後で押しが弱い。  でも、それが嬉しい。  彼は――私が裏切らないと、私の愛を信じてくれているから。  いろんなものを与え合って、同じ幸せを育みあって。  今までも、これからも、さまざまなことを二人で成し遂げていくんだ。  私はそっと手を合わせ、ぎゅっと握った。  彼は嬉しそうに、だけど恥ずかしそうに、そっぽを向いてしまう。  彼の片腕に身を預け、歩みを止めずに――言った。 「…………あなたも私のものだからね」  彼のぬくもりが、私の言葉に頷いてくれた気がする。  ムードも何もないけれど、ときめきは溢れるほどに脈打って。  彼の、ぎゅっと握ってくる手を、ぎゅっとぎゅっと握り返していた。  だから今日も歩く。  二人っきりで、同じ歩調で。  同じ道筋を、手を握り合いながら――  奪われたくないから――