【タイトル】  保育参観 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  コメディー 【種別】  短編小説 【本文文字数】  832文字 【あらすじ】  その名のとおり――季節イベント行事ショート・ショートの消化。ほのぼのでのほほんで計画に優しい掌編が書きたかったから書き上げた。後悔はしてない。原稿用紙一枚ものに挑戦中☆日常の人は常にいろいろ考えてる、と伝えたいかもしれない。 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************ 保育参観  今日は保育参観。親の鋭い目に射抜かれる、一種の審査なのだ。  個人的偏見等の壁は乗り越えづらいと噂に聞く。  うちの子にはあまり構わないのねー、だとか。少しうちの子に厳しすぎるんじゃありませんことー、だとか。  必要なのは、柔軟な対応と幅広い察知能力――  そう、これは戦争なのだ。  グッと両拳を握りこみ、気合を入れる。  シュミレーションは完璧。大丈夫。  ……シ"ミュ"レーションだったか?  "シュ""ミュ"に混乱して、途端に平静を失う。何が大丈夫なのだろう。上部が(サイズ的に)大、それのほうがまだ誇れる。丈夫さが(ゲーム系ステータス的に言うと)大、ドジってこけることが多いからそれも自信がある。 「うぇーい。何、話を脱線させてるんですかっ」  負けるな自分。どんな苦難(きんちょう)もこれまで乗り越えてこれたじゃないですか。大丈夫だ自分。ああ、何が大丈夫なのだろう。上部が……って、思考がループしてるであります。危険域な状態であるですよ自分〜。 「……行こう」  勇気はある子なのであります。昔から、突っ走り方さえ良ければと定評なのであります。  そして、我が組で授業開始を待ち望んでいるであろう園児たちとその保護者に向かい歩き始める。  ――と、トイレを横切るとき、丁度ドアを開けて出てきた男児とぶつかってしまった。  身につけた力の動きを咄嗟に再現。それにより、男児が跳ね飛ばされないよう調整がされて、私はほっと一息。 「ごめんねー、大丈夫? 痛いところ、ない?」 「ぁー……」  じっと私の顔を覗き込む彼。どうしたのだろう。パチクリと瞬きもしないとは、実はものすごい事態を目撃していると知らせてくれているのではないだろうか。  彼はゆっくりと片手を上げ、人差し指を私に向けて、後ずさる。 「せんせーが、せんせーのかっこうしてない……」 「――っ」  大失態により、大急ぎで駆けねばならなくなった私は、緊張も何もなく自然体でいけて、何事も無かったのであった。