【タイトル】  鯉のぼり 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  コメディー 【種別】  短編小説 【本文文字数】  702文字 【あらすじ】  その名のとおり――季節イベント行事ショート・ショートの消化。ほのぼのでのほほんで計画に優しい掌編が書きたかったから書き上げた。後悔はしてない。原稿用紙一枚ものに挑戦中☆日常の人は常にいろいろ考えてる、と伝えたいかもしれない。 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************ 鯉のぼり  とっても……大きいです。  青色の鯉さんと、赤色の鯉さん。ぱっくり口を開けても、ごはんはあげられないですよ〜  代わりに、風をいっぱいいっぱい食べさせてあげますからねぇ。うんしょっと。  私は青色の鯉さんの口元を摘む。正しくは、そこから伸びている糸だ。  窓際までやって来て、ベランダで縦に伸びる手すりへと糸を結んでいく。  ひとつ、ふたつ。みっつめを取ろうとして、絡まって玉をつくっているのを見つける。  あらあら、解いてあげなくちゃぁね〜。ちなみに、糸をほどこうとして全身に絡まっちゃうような破廉恥イベントは起きませんよ。私もそこまでドジではないのである。えっへん。  さて、とりあえず一個と。 「ちゃんと舞い上がったよ〜。きゃーっ」  嬉しいであります。何一つドジらなかった! ひゅーひゅー、自分すごーい。  この調子でもう一個も……と振り返ると、 「わぁ、だ、駄目だよ!」  園児の男の子が三人、赤の鯉さんをくしゃくしゃにしてきゃっきゃっと遊んでいた。慌てて駆け寄る。  と、その時、窓のところの段差に足を引っ掛けた。  パックリ口を開ける鯉さんが、瞬く間に視界を埋め尽くす―― 「へ」  食べられてしまいましたよ。ここまで育ててくれてありがとう、お母さん。こんなところで終わってごめんね、さよなら私の未来……  ふはは。布製バンザイ。まだまだだねっ。私の人生、まだ終わらんよ。  手探りで布の感触を掴み取り、ふんにゃらばっと力を込める。 「うげぇ」  首が絞まった。呼吸を再開するため、とりあえず奥にもどる。するとやはり、首の絞まりが緩まった。  考えられることは一つ――鯉の口元にある糸が、首に絡み付いている。  引けば窒息。引かねば酸欠。  ど、どどど、どうしよう!?