【タイトル】  年長お泊り保育 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【ジャンル】  コメディー 【種別】  短編小説 【本文文字数】  659文字 【あらすじ】  その名のとおり――季節イベント行事ショート・ショートの消化。ほのぼのでのほほんで計画に優しい掌編が書きたかったから書き上げた。後悔はしてない。原稿用紙一枚ものに挑戦中☆日常の人は常にいろいろ考えてる、と伝えたいかもしれない。 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************ 年長お泊り保育  窓の外に真ん丸なお月様が昇っている。 「こわいよ、こわいよ」 「大丈夫よ。みんな、いっしょだからねぇ」  寂しがり屋な女の子は励ましてあげて、寝かしつけていく。  いつも気苦労が耐えないが、こういう日にかぎっていつも以上に大変だ。わくわくどきどきしている子供達は、放っておくと起きて遊び始めてしまう。昼間にいっぱい遊んだでしょとか、底無し元気な子たちには関係ないようである。 「幽霊こわいよー」 「だいじょうぶだよ。幽霊なんか、ぼくがやっつけてやる」  宙に向かってえいえいと拳を打ち込む男の子に、クスリと笑えてしまう。  ……お風呂入ったときに、泡が目に入ったって泣いてたのになー。  でも、男の子だもんね。女の子の前くらい、泣き虫はやめちゃうのか。さっすがー。  意気込みだけはかってあげよう。建前で終わっちゃうようじゃ、先行きが不安だけど、どうなのかな―― 「早く寝かしつけてくださいな」 「ひぇぇぇっ!?」  ドアを薄ら開けて、その人は立っていた。  懐中電灯に真下から照らされた顔は……シワくちゃだから余計に、幽霊染みている。 「ハッハッハッ。早くしてくださいね」  絶対に、意図的な犯行だ。  怯えさせられたのが悔しくて、同じ先生をしているその男の後ろ姿にべーっとする。  振り返った。 「……だ、だいじょーぶ、だからな。ぼ、ぼぼ、僕がついてる」  あの男の子が、ぷるぷる震えていた。  怖いだろうに――しかし、ちゃんとあの女の子を護るよう立ちはだかっている。 「……うん。だいじょぶだよね」  偉いぞ男の子。私は、男の子の背にいる女の子と優しい眼差しを交差させた。