【タイトル】  ライトファンタジー〜勇者と魔王〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  FILE07:我が蛇にて死にたまえ(第33部分) 【ジャンル】  ファンタジー 【種別】  連載完結済[全82部分] 【本文文字数】  7051文字 【あらすじ】  語られるは旋律、輪になって踊る道化師達の伝説。ある道化師は勇者の名を語り、またある道化師は魔王の名を名乗り。王道から成る、世界の真実をぶち壊す、ファンタジーストーリー 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  六人が歩いていた。  エルとヒオをトップにして、フレイアとレイが後に続く。  セレスティアの使役する光結晶に乗せられた、気絶中のラオウとセレスティアが後衛で歩いていた。  エルがフレイアとレイに、振り返ることなく口を動かしている。 「……ってことでつまりは、こっちの実力を見てもらおうってことだったんだよね。 僕とセレスティアはヒオとラオウに面識があったんだけど、まあ、ついでかな」 「う〜ん……わかったようなわからないような。フレイアちゃんは?」 「……これが年の差かぁ、見た目ではいっしょなんだけど、なんだかなぁ」  フレイアが頭を押さえたことに、レイは首を捻った。 「フレイアちゃんは同い年だよね?」 「……ええと、それが、違うんだよね。私も、兄さ――エルも、セレ姉さんも。 肉体成長止めてるから、もっと年上」 「ええ、えええええ!?」  フレイアの頭へ手を置き、自分の頭に手を置いたレイは、背を比べながら驚きの声をあげる。  フレイアはすまなそうにレイを上目遣いで見つめた。 「ヒオも同じだったよな?」  エルの目がヒオへと向く。  くしゃりと微笑んで頷くのをみて、レイはさらに目を丸くした。  そして、フレイアへと抱きつく。 「すごいすごい、すっご〜〜〜〜い♪」  年上への対応とは思えないレイの行動。  思わず頬を緩ませたフレイアは、目を閉じてレイへと任せた。  エルは目を前面へともどして、息を吐いた。  ヒオはエルを覗き込む。 「良い娘(こ)ですね、レイシアさん」 「ああ――俺もそう思うよ」  エルは目を細めて、そう断言した。  一本道を抜けると、ひとつの広間へと出る。  その地には様々な呪が施され、世界の行く末を見守る傍観場を形成していた。  地から壁へ、壁から宙へと反って進む四つの呪力が、広間の中央で衝突し、八方へとミクロとなって散開する。  術式の永続は散開した呪力によって行われ、呪力は術式そのものから溢れ出ている。  完璧なる永久機関――ヒオは立ち止まった。 「改めて、この場の行使権限を持つ『罪亡き人』の【断罪執行者 自然干渉型】ヒオです」  トン、という足音が響く。  皆が振り返った先には――光結晶から降りたラオウが。 「同じく『罪亡き人』の【断罪執行者 物理干渉型】ラオウだ。よろしく頼む」  フレイア、レイ、エルの横を通り過ぎ、ヒオの隣へと移るラオウ。  ヒオは一言二言ラオウと言葉を交わすと、三人へと目を向けた。 「それでは――語りましょうか」  ヒオは、片手を胸に当てる。  語るに相応しき落ち着きと寛大さを持って、口を開いた。 「抗えぬ【神の決定】の、すべてを……」  ライトファンタジー〜君の待つ向こうへ〜 「あなた方|人(・)は『罪亡き人』を何だと心得ていますか?」  レイは頭を捻った。  レイの知識には、『物影』の三段階目が『罪亡き人』だと記されている。  二段階目が『大罪の物影』で、その時点で何らかの特異を持つ。 「……『物影』だ」  エルの答えに、レイは心の中だけで頷いた。  だが、ヒオは首を横へ振る。  そして、口を開いた。 「この世界の罪、その対価を頂くために無の存在、空の存在『物影』が顕現します。 それは、【神の決定】と呼ばれる覆ることのない事実です。 死と生の天秤は、神の目に止るほどのことだということです。 そして、『大罪の物影』は【物影がなんらかを取り込むことで生まれる存在】」 「……取り込む?」 「はい、取り込みます。空虚を埋め尽くす何かがあることで、『大罪の物影』へと進化します。 『大罪の物影』には自我がありますが、それが低レベルなものなのは【取り込んだ意思】ではなく【物影の意思】だからです。 取り込まれたものは死ぬこともなく、『物影』の上か下かになります。 『物影』の下に位置し、掌握され、力の糧だけのために行使された場合、『物影』は『大罪の物影』となります。 私たち『罪亡き人』はその反対――『物影』よりも上位にて、『物影』を掌握し、『取り込んだ意思』が優位に立った場合の存在」 「……ヒオたちは人間、なのか」  エルの声に僅かな震えが混ざる。  レイは首を捻り、口を開いた。 「じゃあ、なんで区域にもどろうと思ったりしないの?」 「……もどることができないから」  ヒオの表情に影が差す。 「私たち『罪亡き人』はすでに人じゃない、最初の頃では知識などないに等しいし。 それに、私たちの魔力は『物影』のまま。もし人の近くにいたりしたら、悪影響を与えてしまうかもしれない。 それに――月日が経ち過ぎた、から」 「無知すぎるてめぇらには、この世界を襲うもうひとつの危機のことも知らないだろうな」  割り込むようにラオウが鼻を鳴らした。  エルは眉を顰める。 「……『物影』以外の危機。『帝王』のことか?」 「いや、『帝王』派もある意味この世界の救世主となりそうなやつらさ。もっともっと大きな、意思が世界を殺している。 ――【神の決定】であり、【世界の意思】が、幕を下ろそうとしてんだよ」  ラオウの言葉に真剣みが増した。 「まず第一世界、勇者と魔王の循環。あれはある意味神のご偉功だったが、アカシャに載らない――完全なる隔離世界だったってわけだ。 神の世界監視機関≪桜天≫もただの力でしかなかった。 そして、どこかの英雄様のおかげで軸へともどったわけだが――この世界が突然アカシャに介入した、ということになり、異質と判断されている。 そして行われたのが、異質への対処――『消失』 『物影』なんてものとは比べ物にならない、【神の決定】そのものを顕現したかのような――死海。 それが、この世界を蝕むもうひとつの危機だ」  死海――レイの知らない単語。  エルは曖昧な表情をしながら、思考回路をぶっ飛ばしていた。  イカれる手前の、脅威的な三件同時思考。  そして、弾き出された。 「……滅ぶのか」 「そのとおりだ、エルレイド。 世界は、滅ぶ」  エルは五指を握りこむ。  そして、声を張り上げた。 「回避することは!?」 「できない。アカシャへのアクセスも断たれた今、神と対話すら不可能だからな。 神に会うことができれば、また違ってくるが……」  エルは押し黙る。  だが、セレスティアがエルの前へと躍り出た。 「神の眷属機関なら、まだこの世界に存在します――ひとつだけ」  フレイアが続く。 「今この世界が直面する問題はふたつ。『帝王』が正しいのかもしれません。ですが、私たちにも私たちの意地があります。 早々にはいそうですかと渡すつもりもありません。 この世界には、いろいろなことが刻まれています。新世界になれば、そのすべてが失われる」  エルが、ラオウを見た。  ラオウが、エルを見た。  口を開いたのは――エル。 「この世界で、失いたくない軌跡がある。そのために――俺たちはこの世界で、生き残る。 新世界じゃなく、この世界で……そのための助力になってほしい。ラオウ、ヒオ」 「……私は、手伝います」  ヒオはすぐにそう言って微笑む。 「この世界には、いろいろとありがとうを言うべきことがありますから。 それに、この世界だからこそラオウと会えたんですし♪」 「……そう言ったら、俺も賛同するしかないな」  ラオウは息を吐いた。 「ヒオの意思についていく。ヒオの意思は俺の意思だ。 ――これが、俺たちの答えだ」  そしてラオウは、エルへと手を伸ばす。 「共に戦おうか。そして、洗争を生き残ろう――【神の代行者】エルレイド」  エルは、ラオウの手をしっかりと掴んだ。  ヒオはにっこりと微笑む。 「それでは、具体的なことを決めていきましょうか」  一定な速度を乱すことなく、光は下から生まれ、上で消える。  抗えぬ運命かのように、やり直す物語かのように、何度も――何度も。  世界は今、ふたつに分かれていた。  それを知る者は、少ない。  だが、しっかりとふたつに分かれていた。  どちらが白か、どちらが黒か。 「判りはしないさ――どちらもが悪であり、どちらもが正義である以上」  今、黒の軍が蠢きをはじめていた。  幕開けを奏でるのは、彼らに積もり積もった想いの負。  その心にあるのはどのような義であるのか。  漆黒騎士は飼いならされた犬のように押し黙っている『物影』へと騎乗し、更なる主人の言葉を待っている。  数は、無数。  彼らの誇り高き主人――『帝王』は銃剣を抜いた。 「我と義を同じくする者よ。破滅から逃れるため、救世主とならんとせん者よ。 |救世主(ダークメシア)か、|救世主(メシア)か。そんなことはほんの小さな障害でしかない。 救世主が抗えぬというのなら、我々が抗いぬこう。 我々はまだ消えぬ、まだ輝き続ける。 そのために――己を剣とせよ!」  咆哮。  賛同の賛歌は、『帝王』に笑みを浮かべさせた。  『物影』は繰られ、『大罪の物影』も虚ろに佇み続ける。  『帝王』は銃剣を色あせた|蒼穹(そら)へと向けた。  そして、銃撃。  それは――幕開けの火種。  火種は更なる発火を催し、火から炎へと燃え上がる。  剣は駆けた。  その先にある決戦の地――【神殿】へと。  世界は今、二つに分かれていた。  剣を迎え撃つは、守護の盾。  いや――壁にならんとする者。  セレスティアとフレイアから権限を与えられた、炎の狂戦士は猛る。  純白騎士は寛大な心のままに守護者となった。  そして、己らの想いを貫かんとするが故に、立つ。  二つの色は今まさに――ぶつかった。  洗争。どちらかの色が洗い流される勝敗の決する|最終決戦(アポカリプス)。  神の負を受けし、崩壊の世界は――更なる乱れを背負うこととなった。  ミーティスは考えた。  考えに、考えを重ね、考えを付け足して補強する。  陣形、消耗と削除の繰り返し、こちらとあちらのどちらが先に消えるかの攻防。  策士にならなければならない、されど、それほどの力量を持ち合わせてはいなかった。  故に、ミーティスは前へと出る。  足りぬ力を補うために、指揮ではなく士気を握るために、先頭で駆けた。  左に三、右に二、前に五。  どれを殺るか、どれを殺らないか――否。  すべてを薙ぎ払う。すべてを焼き焦す。  攻撃因子の連続反応【増殖】は炎のごとく、それに触れし者は火達磨となって地に消えた。  ミーティスの片手を覆うキラー『地獄喰らい』は炎の熱量によって歪んだかのように見え、威力に見合う覇気と威厳が漆黒の軍勢を立ち止まらせた。  一瞬、されど、その一瞬が無数を生む。  空高く弾き上がったミーティスは、舞を舞う。  数回転――弾丸が完成する。  そして、落ちた。 「≪|瞬殺の罪喰らい(マギル・キルバーン)≫」  大洪水にも似た、炎の波紋。  喰らい尽くされた『物影』の数は攻撃因子と同じほどの無数、それに騎乗していた騎士は意識を手放して地へと転がり落ちた。  士気が高まるのを、鼓膜の震えから感じ取ったミーティス。  思わず笑みを浮かべそうになったミーティスを、影が覆い隠した。  見上げる――影の濃さを増す。  影と交わる箇所を持つ『大罪の物影』が、その巨体を地面へと叩き落した。  砂の波立ち。クレーターが更に深くなる。  その行動は殺気の元に行われたことであり――その結果である静止は、紡がれたという結果の意味をもってして。  狂戦姫を――その意味を、遥かに鋭利で、遥かに明確なものとした。  一声。 「……来い。餌ども」  その姿が再度影に包まれる。  言葉通り――音もなく、ミーティスは闇という影に丸呑みされた。  だが、その内から膨れ上がるようにして炎が噴出する。  赤き紅蓮。影は破裂して炎に飲まれた。  一歩も動くことなく佇み続けるは、ミーティス。  その眼光に凝視された存在は、恐れるどころか不敵な笑みすら浮かべてさえいた。 「やあ、久しぶり。ご機嫌いかがかな?」 「……最悪だな。『帝王』」  ミーティスは銃剣を下し構える男を睨み、男――『帝王』はミーティスを見る。  動き出したのは同時。  発砲音が響く。ひとつの発砲音――されど、ミーティスへと迫る閃光の牙は四つ。  ミーティスの一歩前から炎の柱が立ち昇った。  その左右の地面が赤く光り、同じような炎の柱を噴出する。  その現象が連続し、『帝王』の八方を塞ぐ壁となった。  炎の内にいる『帝王』に向かって、炎の外にいるミーティスは呟く。 「……【爆縮】」  途端。  空へ伸びた炎が反り、『帝王』へと落ちる。  『帝王』を包む円が急速に縮まる。  そして、人一人分ほどの球体にまで収縮し――黒く染まった。 「……【サチュラ】」  炎が消える。  いや、喰われたと言うべきか。  だが、ミーティスはさらに『帝王』を追い詰める一手を指していた。  キラー全体を包み込む炎。  それは紅蓮の魔法陣を生み出し、似て非なる魔法陣を上書き――無限の繰り返しを行い、複雑すぎるひとつの魔法陣を描いた。  炎のすべてがそれへと注ぎ込まれる。  魔法陣を構成する奇怪な文字が消去されると、途端に膨大な光が炸裂した。  光と熱、威厳と咆哮。  炎の神龍が姿を現した。 「【偽現】フュームヴェスタ!!」  ミーティスは苦しそうに声を絞り出す。  それとは逆に、神龍は自在に宙を蠢いて『帝王』へとその身をぶつけに行った。  炎のみで構成されたその身に人が触れれば、灰すらも残らない。  追尾、射程、接触速度――それらが最高まで高められた生きる砲弾。  ミーティスの使役する|主核(ゴスペル)の最上級攻撃ともいえる、切り札。  『帝王』の表情を変えるまでには至らなかった。 「君に時間を浪費するわけにもいかなくてね……だが安心してくれ、ちゃんと君の相手は――」  『帝王』は指を鳴らす。  闇の魔法陣が展開、起動する。  一瞬後には魔法陣は消え、別の存在が君臨していた。 「用意させてもらったよ!」  僅かに熱狂的な『帝王』の声。  君臨した何かは、その姿がシークレットに包まれた間だというのに動き出した。  フュームヴェスタが一掃されたのを視覚することはできていないミーティス。  転移が完全終了していない場合、力は極限まで抑えられている――というのに、ミーティスの反射だけが彼の存在についていく。  反射だけしか、彼の存在についていけない。  キラーに防がれた刺突、彼の存在の全貌が晒される。  されど漆黒。  故に禍々しく。  歪曲する槍に、柄と刃の違いはなく。  槍と肉体に、違いと言える違いはない。  そう、槍をも含んでが肉体というかのように。  ミーティスは一度だけ、その人物に会ったことがあった。  呆然と、呟く。 「アウル……」 「今の俺は【不老不死の|槍蛇(ヨルムンガンド)】 てめぇらと同格な位置にはもういねぇんだ――名を呼ぶなよ、雑魚」  ミーティスが押されていた。  アウルの、槍とも斧ともいえる姿になった片腕を無理やりに突き通す。  ミーティスは距離を置こうとした。  だがその距離も、アウルによってすぐさま詰められる。  同時に放たれる重い一撃。  斬光の煌きは黒く、ミーティスに反撃の余地を与えなかった。  肩から一筋の闇が突き出る。  それは槍。  地面に垂直に刺さり、振り上げられた。  ミーティスのキラーが上へと上げられ、下方に隙ができる。  その間に槍を構えたアウルは、瞬速の刃をミーティスへと叩き込む。  僅かに展開した炎も突き破られ、遠く遠くへと吹き飛んだミーティス。  その目の前で、アウルはニヒリとミーティスを嘲笑った。  ミーティスは察した。  アウルから、殺戮がための一閃が己を切り裂くことを。  そして、覚悟した。  炎は己の身に纏われていない、防御も間に合わない――故に、覚悟した。  だが、その未来は訪れない。  代わりに訪れた未来は―― 「ヤッホ、ミーティスちゃん♪」  何本もの封殺光剣によって胸を串刺しにされたアウル。  それに片手を向け、にっこりとミーティスに微笑んだのは――金髪碧眼の幼げな少女。  声のトーンは高く、容姿不相応な盛り上がりをもつ胸部や雰囲気の大人さから、ミーティスは記憶からある人を引っ張り出した。 「卵月さん……?」 「できたら、この容姿の時は【美影】って呼んでほしいな。 といっても、もどれなくなっちゃったんだけどね♪」  美影の片手が、そばに浮遊していた極光を纏う鉄球――光魂を手繰り寄せる。  そして、投げた。  アウルに刺さる封殺剣ごと豪快な音を響かせてアウルを貫く。  血は流れない。  その勢いのまま、地に二度三度跳ねるアウル。  容赦ない――ミーティスは、自分もそうかと自嘲気味に笑みを漏らした。  余裕ができた。知人の再来による余裕。  精神での余裕でしかないが、ミーティスを立ち上がらせるには十分すぎるもの。  しっかりと地を踏みしめて、立ち上がる。 「『帝王』はどっか行っちゃったわよ? 【神殿】には入れないようマジックウォール張っといたけど、さっさと追いかけようか?」 「そうしましょう。お……私一人では荷が勝ちすぎる。美影さんがいてくだされば、勝利は確定に近いものとなります」  美影はクスリと微笑み、目を細めた。 「なんだ、まだ生きてるんだ――さすが。何かネタがありそうね」  感心するように呟く美影。  その視線の先には、立ち上がるアウルがいた。  胸にぽっかりと穴を開けて尚、立ち上がる。  【不老不死の|槍蛇(ヨルムンガンド)】という名――ミーティスは僅かに冷たいものを感じた。 「ここを任されていてな……退くわけにはいかないんだよ」  アウルに刻まれた風穴がふさがる。  黒い何かが渦を巻いていたのを、ミーティスは見た。  アウルの瞳で蛇の紋章が疼く。  闇と闇黒を従えた漆黒の神槍――その片腕を振り上げる。 「さあ――戦え。そして≪我が蛇(じゃ)にて死にたまえ≫」  振り下ろされた。  砂柱が立ち昇り、力と力の激突が始まったのも――同時。  シナリオは、誰かの意図の通りに動き始めていた。  それを知らぬ者は、ただただ円舞曲(ワルツ)を踊り続け。  運命か、意図されしシナリオかの時の流れに飲まれ続ける。  そしてここにひとつ。知らぬ者の円舞曲が――奏でられ始めたのだった。