ライトファンタジー〜勇者と魔王〜 水瀬愁 ライトファンタジー 第三部 第一章 プロローグ ******************************************** 【タイトル】  ライトファンタジー〜勇者と魔王〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  attacca/始終(1)(第43部分) 【ジャンル】  ファンタジー 【種別】  連載完結済[全82部分] 【本文文字数】  1506文字 【あらすじ】  語られるは旋律、輪になって踊る道化師達の伝説。ある道化師は勇者の名を語り、またある道化師は魔王の名を名乗り。王道から成る、世界の真実をぶち壊す、ファンタジーストーリー 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  その昔、世界の三分の二を喰らい去った大神がいたそうです。  大神は、人が億千万揃うこの大地を五歩で一周できるほど、それはそれは大きかったそうです。  しかしそれでも、大神に立ち向かおうとする人々はいました。  国の王たちは団結して大神を打ち倒そうとしました。 だけど大神は、人ほどに小さな軍勢を引き連れて対抗してきて、二度起こった戦争の両方ともで大神は傷ひとつ負わなかったそうです。  そうして人々はゆっくりと絶望に打ちひしがれていきました。  そんなとき、三人の希望が現れました。  【極光朱炎の双剣士】ギルバートは、大神と同じくらい高い純白の塔の前で言いました。 「共に戦うのは許そう。しかし、共に死に行くことは許さない」――  『最後の戦い』と語られる第三次対大神戦争直前のその一言が、ギルバート最後の言葉となったものです。  大神が地に沈み、人々が絶望から抜け出した後、三人の希望は国を作りました――  教会。民にはミサを執り行う場所として知られているその場所。ステンドガラスが、暖かく微笑むように光を降ろす。 「……見えますわ。 未来を閉ざす、不穏の闇。その闇は、我らに幸福をもたらす光とともにやってきます……」 「闇が、光とともに――どういうことなのですか、聖女様!?」  食いかからんという様子の少年に、聖女と呼ばれた幼子が深刻な面持ちで頷く。  洋風で教会特有なその場景に、少年と彼女はたった二人っきり。 「運命をはずれし、善し悪しの定められぬ存在。その存在が、この世界に奔流を持ち込むと……神が忠告を示してきています」 「ならば、今すぐにでも運命の保持に力を注がねば――私が参ります。俺にお任せください、聖女様!」 「行ってくれますか、レスナ・クリグファルテ?」  レスナと呼ばれた少年が、サッと聖女に跪いた。  なめらかな青白で統一された服。その腰元に差された鞘かベルトが擦れ、ガシャガシャと音を鳴らす。 「我が命、聖女様の御元にあります」  そして、承諾の言葉を吐いた。聖女はそれを聴き、両手を胸の前に組んで祈祷を捧ぐ。 「『第一聖女』マリス・フォスフォフィファファフェファファオ・フォアフォアファイフォファフィルフォールライト。 あなたに、見定めの愛(まな)を求めます」 「……神の行いに携われることを、迚(とて)も喜ばしく思います」  そしてレスナは颯爽と身を翻し、聖女に背を向け、教会の門へと出向かった。  今この瞬間に、物語が幕を開けた。  その意味は、序の今は"運命よりはずれし存在"を解ることにあり、  その幕開けによって、刃が抜かれ、  その幕開けによって、敵意が剥かれ、  その幕開けによって――折角の終焉が、終わりを告げてしまったのだ。  終焉の名を、死闘という『最後の戦い』という。       ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆  ――自らを叱咤する。  それを合図に、少女は両足に力を入れた。  ……そうだ。  果たさなければならない。  ……約束を。  背負わなければならない。  ……託されたものを。  約束は、己が誓いでしかないけれど。御託は、酷く醜き運命の下卑にすぎないけれど。  それでも、自分と共に"これら"は生き往く。"これら"は、少女が生き続ける限りついてくる"罪"のようなもの。  何の"罪"か。少女が思うに、"罪"は世界の過ちを指しているのではと。  人を代表するかのように、私は擦り付けられたのか。少女はそう思った途端、挫けそうになった。  ――自らを叱咤する。  それを合図に、少女は歩き出した。  あてなどない。しかし、前に進んだからこそ。  偶然(うんめい)に委ねられた彼(あ)の身は、其の場へと行き着くこととなった。