【タイトル】  ライトファンタジー〜勇者と魔王〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  f/愚弄(1)(第71部分) 【ジャンル】  ファンタジー 【種別】  連載完結済[全82部分] 【本文文字数】  775文字 【あらすじ】  語られるは旋律、輪になって踊る道化師達の伝説。ある道化師は勇者の名を語り、またある道化師は魔王の名を名乗り。王道から成る、世界の真実をぶち壊す、ファンタジーストーリー 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  黒い海を漂っていた。  此処は、その内にしてその外にあらず。此処は、その外を覗き込むその内。 「(此処に――居る)」  誰でもない自身は、今此処に。黒に沈んで、黒に蝕まれ、今にも黒の一つになる。  嫌だ。抗いたい――なぜそう思うのだろう。黒のことなんて、何も知らないのに。  本能的拒絶。そう、理屈も無いのに結論付けていいのだろうか。答えはイエス。広大なこれは、恐れるべき対象にちがいない。 「(此処に居たくない――)」  意思とは裏腹に、沈みゆく。焦燥に駆られてもがくも、無駄に終わる。打つ手がない。抗えない。  想像(イメージ)――  白い天空。黒い海原。その境、地平線にのみ属して天を見下(みお)ろし海すらも見下(みくだ)す、  少女、  その姿は美貌に満ち溢れる。  その様は、先導にして委託。  総てを許容する"受入(うけいれ)る"の女神と、威厳と風格が剣と化す"覚悟する"の剛神とがもし子を産み落としたらば、そのような神子が世界に芽生えたことだろう。  白い天空が其方の向こうに、凄まじい早さで流れていく。その最中、神子はゆるゆると片手を持ち上げて、不敵に微笑んで見せた。  優しいようにも、酷いようにも、悲しさを押し殺しているようにも、隠し切れない感情の波に心の防波堤が瓦解されたようにも、みえる。  美しいけれど、実は――そう思ってはいけない笑顔でなかろうか。  ふと気づけば、海の中になど己は居なかった。  緋色が積み重なる、空。知らないそれを見上げるように、地に背を預けている。  寝そべっているのだ、つまり。思い至ると同時、起きなければと使命感が溢れる。  それに突き動かされて、身に力を込めた。 「目覚めたか――遅かったな」  何よりも早く、想像の中の少女が目に映ったので、  レスナは起床していきなり、自身の理解力では到底太刀打ちできない無理難題を前にしたことが解った。