【タイトル】  ライトファンタジー〜勇者と魔王〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  FILE8:第二の魔力、封印解除・・・・1(第8部分) 【ジャンル】  ファンタジー 【種別】  連載完結済[全82部分] 【本文文字数】  3609文字 【あらすじ】  語られるは旋律、輪になって踊る道化師達の伝説。ある道化師は勇者の名を語り、またある道化師は魔王の名を名乗り。王道から成る、世界の真実をぶち壊す、ファンタジーストーリー 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  FILE8:第二の魔力、封印解除・・・・1        瞬速の攻防。  一人が攻撃に回ったかと思うと、すぐに防御に回る。  いや、ほとんど同時に二つを行っている。  セレは三つの光球を生み出し、まるで生き物のような動きを光球にさせる。  ひとつは地面に、もう一つは迂回しながら忍者の一人へ、最後の一つは上空へ。  地面に衝突した光球は爆発を起こし、砂煙をあげ、迂回する光球を隠す。  光球は煙の先にいる忍者にあたると、閃光を放ちながら爆発した。  フレイアの前で停止したもう一つの光球は、煙にまみれて迫っていたクナイを弾く。 「【双天月戒】!!」  フレイアは双剣の連撃を放つ。  煙の一端の先にいた忍者は忍刀で防ぐが、肩に切り傷が生まれる。 「私の光は――――天と呼ばれる月の光!!」  六つの翼が忍者を囲むようにして宙に止まり、羽先を忍者に向ける。 「その光は、夜の闇に屈しない!!」     【リヴォルバ・サウザンド・ライトニング】      羽先に小さな魔法陣が生まれると、瞬時に弾けた。  その爆発で生まれた何十もの閃光が忍者の一人を狙う。 「私は【風守】・・・・・侵入者排除の名において、お相手いたす」  風守は腰にかけたもうひとつの忍刀を引き抜き、二刀流になる。  ひとつを上へ、もう一つをしたへ向け、停止する。  閃光は風守の八方から迫り、セレが上空に放った光球が風守の頭上から風守に迫る。  風守に逃げる道はない、風守はゆっくりと動き出した。         「【迅風疾爆・双斬連撃】」          風守は、目に見えないほどの速さで残像をつくりながら双刀を振るう。  閃光の一つ一つが弾かれ、地面に抉り傷を残していく。 「さすが忍者・・・・最速を極めた職の者ですね・・・・」  風守は隻眼に殺気の光を宿し、双刀を地面に突き立てた。  フレイアは双剣を交差させ、腰を低くし、走り出す。 「剣術なら、負けないつもりなんですけどね!」  双剣によるひとつの、必殺斬撃が風守をおそう。  風守は顔色一つ変えずに動きだし、双刀のひとつで防ぐ。  風守はフレイアの背へもう一つの刀を振るう。 「はっ!!」  フレイアは飛び上がりと同時に双剣の交差をやめ、迫る刀を防ぐ。  フレイアは足に力を込めると、風守に蹴りをたたき込んだ。  風守のからだがくの字に曲がり、地面に倒れ込んだ。 「【我流――」  フレイアは交差させた双剣を自らの頭横にして構えた。  双剣の交点は、周囲の空間を震わせながら光を集束させていく。  フレイアの目は、冷たい光を宿して、風守に殺気を込めている。 「――月牙猛光・来襲斬】!!」  フレイアの剣が振りおろされる。  迷いや戸惑いのない最高威力をもった一撃は、振りおろしきったときに砂煙の爆発をおこす。  風守だけでなく、そのまわりをも巨大なクレタとする。  魔法と剣技の混合、そのの威力はすさまじい。  それを汗一つかかず、反動で体を痛めることもなくやってのけたフレイアの実力は人の域を越えている。 「・・・・・この感じ、船の時の!!」  砂煙に、ひとつの影が映る。  フレイアが構える間もなく、それは行動を起こした。 「お姉ちゃん、気をつけて、このひとたちは人じゃない――」  そのとき、フレイアは衝撃波に包まれた――           「フレイアちゃん!?」  もう一人の忍者と攻防をおこなっていたセレは、目を見開く。  二人から少し離れたところで戦っていたフレイアの魔力が途絶えたからだ。  だが、集中したセレにフレイアの僅かな魔力が感じ取れるようになる。  セレは最悪の事態になっていないことに胸をなで下ろし、八本のクナイを構えた忍者をにらんだ。 「いま、私にすべきことがふたつある。フレイアちゃんを守ること、弟君に追いつくこと。  だから――あなたに構ってる暇はないんです」  セレは両の手を合わせ、手の平を忍者に向けた。  サクラの偽似技、手のひらに光が集まる。 「太陽の、暖かき光よ」  詠唱、セレの体が光を放ち、白い影を上空へと立ち上らせる。  忍者はクナイを構えなしで放つ。  だが、クナイはセレに届かない。  光に包まれ、消え去ったのだ。 「一筋の光で、我に敵成す者を正したまえ――」     【ホリ・ジャッジメント・エンド】      唐突にセレの周りが暗く暮れる。  いや、光が別の場所に流れたのだ。  音のない、無音の終罵。人の域を越えた一撃によって勝負は決していた。  嵐の前の静けさ、忍者の胸を一筋の光が射抜いていた。  光速の、ずば抜けたスピドに追いついた音と現象。  忍者の胸を焼く音、血の流れる音、忍者の敗負という現象、人の理解できる範囲に追いついたとき、忍者は光の流れに乗って吹き飛ばされた。  聖堂に立てられた、支えるもののないいくつかの柱の一つにぶち当たり、壊が起こる。  柱はゆっくりと、徐々に速く、地面に倒れ、派手な音を響かせた。  セレは構えを崩し、息を吐くと、状況分析を始めた。 「サクラさんは二人を相手にしてる……弟君は、忍者さんと同じような気を持つひとと、龍さんと戦ってるみたい」  セレは体に支援魔法をかけ浮上させると、フレイアの魔力が在るほうへと駆けた。  忍者の埋まった瓦礫に背を向けて……        ……キッ…… 「え――」  セレの背を、強い衝撃が襲う。  それは背を貫いて、セレの視界にうつる。  それは――まがまがしき、黒き槍。  ところどころで歪曲し、紅い宝石のようなものが埋め込まれた、セレの体を突き刺す槍。 「かっ・・・・!!」  唐突にセレは口から血を嘔吐して、安定感をなくし、地面に落ちる。    セレは、手で槍を掴み耐えるようにして、辺りに目を走らせる。  瓦礫が浮き上がり、闇の気が吹き出ている。  その中心には、忍者だった者が立っている。  その姿は異形。  片腕が一つの大砲となっており、銃口からはセレに刺さっている槍に酷似した刃がみえる。  隻眼で、みえなかったはずの眼が大きく見開かれ、真紅の炎を揺らめかせている。 「・・・・・・・・」  その者は砲先をうずくまっているセレに向けた。  セレは回復の光に包まれてはいるが、身動き一つとらない。 「これが・・・・人と魔物の合成、異端のキマイラ・・・・聖堂を勇者から守っていたんだね」  セレは一人ごちるようにしてつぶやく。  砲先には紫の光が集まり、黒い斑点に砲が包まれていく。 「・・・・魔王様の命により、処罰を下す・・・・」       【O・ME・GA】      闇が放たれた。  はるか太古、一つの世界を滅ぼした神の名を持つ、破凶技。  それは、セレの体にまっすぐと伸びていく。  セレの眼に、恐怖はうつらない。  なぜなら、まだ残る札を挙げてすらいないのだから。  セレに余裕があった、勝利の余裕が。  それを生むのは契約。残酷なようでいて、最高の優しさでできた服従契約。 「あのころの私がわからなかったこと、今はわかる。  だから――できる」  セレは感じる鼓動を受け止め、宣告する。       「必ず――弟君の隣に立つ」             「・・・・・クッ・・・・」  巨大なクレタ、そこの中心でうずくまるフレイア。  その背にある羽のほとんどは無惨にも砕け散り、翼の折れた天使のような姿になっている。  刃こぼれも、傷もない、無傷の一本の羽を両手で握りしめたフレイアは風守に顔を向けた。 「・・・・・・」  風守の右腕は肩まで黒く変色、人二人分ほどの爪になっている。  紫色の波動を発し、空間を歪ませるほどの力をもつ最強最悪の殺戮武器。  フレイアはそれに掠っただけで致命傷を負ったのだ。  風守の体には不釣り合いの大きさの爪を、風守は簡単に振るっていた。 「こいつはキマイラ・・・・お姉ちゃんのほうにいった忍者もキマイラ化したみたい」  フレイアは目に滴り落ちる血を拭い、立ち上がった。  風守の、見えないはずの目が見開かれ、脈動するかのように揺れ動く。  風守は爪を振りあげた。  三つの斬撃が地面をえぐるようにして、フレイアを襲う。 「私は・・・・まだ死なない、まだ死ねない」  魔力が上がる。極端にいえば水道のコックを開いたように、溢れ出す。  フレイアは型など気にせずに、剣を大振りして斬撃を防いだ。 「お姉ちゃんも笑うようになって・・・・やっと、やっとみんなで幸せになれそうなのに・・・・こんなところで死なない・・・・」  フレイアは剣を掲げる。  剣の輝きが徐々に増していくと、ピンク色から透き通った水色へと変色した。  なくなったはずの七本の羽も元に戻り、水色へと変色していく。 「あなたに・・・・壊させはしない・・・・私たちの未来を!!」  フレイアのなかにある二つの限界。  ひとつはピンク色のはねを生み出す【開眼】。  そして、いま開かれていくのは第二の魔力の具現。         「これが私の得た力。これが私の忠誠心!!」  セレは言った。  セレの周りの僅かな空間がぶれ、第二の魔力に等しきものを具現化させていく。     「私は・・・・みんなを守る力を、今こそ使う・・・・未来のために!!」  フレイアの羽は半透明から、白き光に包まれる。  具現化されていくのは羽ですらなくなった、神の扱う武具。     「「・・・・・・」」  二人の忍者はただ佇んで、訪れる時を待つ。  セレとフレイアは宣言する。  自らの全力解放の、キワドを。         「「【第二封印解放要請・開花】!!」」        勝敗は、まだ決しない――