【タイトル】  ライトファンタジー〜勇者と魔王〜 【作者】  水瀬愁 【管理】  小説家になろう[ウメ研究所] 【サブタイトル】  attacca/始終(4)(第82部分) 【ジャンル】  ファンタジー 【種別】  連載完結済[全82部分] 【本文文字数】  1066文字 【あらすじ】  語られるは旋律、輪になって踊る道化師達の伝説。ある道化師は勇者の名を語り、またある道化師は魔王の名を名乗り。王道から成る、世界の真実をぶち壊す、ファンタジーストーリー 注意 小説には著作権があります。この小説を無断で再配布・転載する事は著作権法で禁じられています。 (C)水瀬愁 ************************************************  『第一聖女』の砦。  教会。  ステンドガラスは、大きな穴を穿たれている。 「……」  見上げた後、見下ろした。  二つの躯がある。  桜の花びらが降り積もったかのような中に、佇むように二つだけ。  一つは、聖女。  好きだった。できれば、愛し続けていたかった。  ステンドガラスの大穴から降りる光を、聖女の目はぼおっと見つめている。聖女の目を閉ざしてあげて、髪につく花びらも除(ど)けた。  一つは、仲間。  どこか柔らかくて、あどけなく微笑むのが良くって、なぜか一緒に居て。でも今では、聖女と同じく安らかな寝顔をしている。  もう、笑ってはくれない。  彼女にも聖女と同じ配慮をしようと近寄ったその時、ぽっと光が灯った。  目を見開く。しかしすぐに、ああ、そうかと、悲しくなった。  リスの様な猫が、ぐったりと冷えていた。旅の序盤以来の顔合わせが、まさかこんな風とは思いもしなかった。  ナナの躯にも先ほど手を合わせたばかり。クロシュはまだ見ていないけれど、ナナがこうなのならきっと彼もそう。  誰一人、残らない。 「……安らかにおやすみ」  残らせれたのは、きっと意味がある。  全部背負ってみせる。だから、眠ってくれて大丈夫。  みんなの優しき願い。  自身の、優しき願い。  きっと大丈夫だから。  番犬(クリグファルテ)は救世主(メシア)ではないけれど、  どんなに傷ついたとしても、歩くことはやめない。 ◇  目覚めた。  息ができる。緑色の水の中だというのに。腕を伸ばしきれないほど狭い壁が、目に映る。首を回して後ろを見ると、壁はそこまで続いていた。どうやら筒状らしい。  上を見る。筒が窄まって、黒い円形に接着されている。その円形は違う筒のようで、がんじがらめになってどこかに伸びていた。  下を見る。見るより早く、声がする。 「人格形成体収納可能型全距離対応戦闘用アンドロイド『キャスト』の正常稼動確認。内容物にも、異常は見られません」 「起動。覚醒したようです。成功ですね」  殿輩がざわめいている。少しして、一人の男が近寄ってきた。  鋭い目で、睨みつけられる。うろたえると、すぐにその目はキツさを失った。  一度伏せられる目。再度向けられ、とりあえず受け止める。  わけがわからない。しかし、次はもっとわけがわからなかった。  差し出されたのだ、片手を。  壁があるから掴めないというのに、どうしろと。疑問の目を向けようと、レスナは再び男の目を見んとする。 「ようこそ――|21世紀の日本(・・・・・・・)へ」  男の肩越しに、手を振って不敵に笑うエヴァンジェリン・Q・リリ。  ああ、これが白の天空なのだと――レスナは、何も解らない中でそれだけは確信した。